年5日の年次有給休暇の取得義務化が施行されます。
これまでにご質問いただいた内容をもとに
有給休暇の取得義務化について解説していきます。
※内容は順次更新していきます。
- Q1 有給休暇制度について教えてください。
- Q2 有給休暇が発生する要件を教えてください。
- Q3 産休や育休で休んでいる社員にも有給は発生しますか?
- Q4 有給休暇は何日付与したらいいですか?
- Q5 年5日の年次有給休暇取得義務の対象となる労働者を教えてください。
- Q6 有給休暇の取得義務化で何が変わるのですか?
- Q7 使用者側からの有給休暇の時季指定はどのように行ったらよいですか?
- Q8 年5日の年次有給休暇はいつまでに与えればいいですか?
- Q9 年5日以上の有給休暇を取得している労働者に対しても有給休暇の時季を指定する必要がありますか?
- Q10 労働者が指定した時季に休まれると困るのですが、時季の変更は可能ですか?
- Q11 有給休暇を取得した際に払うべき賃金はいくらになりますか?
- Q12 有給休暇の管理にルールはありますか?
- Q13 入社時期がばらばらで管理が大変です。何か良い方法はありますか?
Q1 有給休暇制度について教えてください。
A1 年次有給休暇は、賃金が支払われる有給の休暇日です。
労働者が有給の取得を申し出ることで権利を行使します。
年次有給休暇は、労働者の心身の疲労回復とゆとりあるワーウライフバランスを実現するため、「休日」とは別に規定されている休暇です。
心身のリフレッシュを図ることが目的である制度ですが、同僚への配慮や有給申請することへのためらい等の理由から取得率が低調であり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。
有給休暇は要件を満たす全ての労働者に与えられ、利用目的は労働者の自由です。
Q2 有給休暇が発生する要件を教えてください。
A2 次の2点を満たした労働者に年次有給休暇が発生します。
@1年間の継続勤務(入社初年度は6カ月)
A全労働日の8割以上出勤している
@の要件の「継続勤務」とは在籍期間であり、以下の場合は原則として継続勤務として扱われます。
・長期療養による休暇中の者
・定年退職者の再雇用
・有期雇用契約労働者の契約更新
・会社の合併、事業譲渡
・在籍出向
Aの要件の出勤割合が8割以上の算定は、全労働日のうち8割以上出勤したかどうかで判定します。
「全労働日」=1年間(6カ月間)の総歴日数ー所定休日
Q3 産休や育休で休んでいる社員にも有給は発生しますか?
A3 実際に会社には出勤していないものの、出勤したものとみなすべき日があり
ますので注意が必要です。
「出勤したものとみなす日」
・業務上傷病にかかり、療養のため休業した期間
・育児休業期間
・介護休業期間
・産前産後の休業期間
※年次有給休暇を取得した日についても、出勤率算定にあたってこれを欠勤として扱うことはできず、出勤したものとして扱いますので注意が必要です。
Q4 有給休暇は何日付与したらいいですか?
A4 正社員は勤続年数、パート・アルバイトは勤続年数と所定労働日数に応じ
て付与します。
【原則となる付与日数】
継続勤務年数 | 6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
※管理監督者や有期雇用労働者も含まれます。
【パート・アルバイトなど、所定労働日数が少ない労働者に対する付与日数
週所定 労働日数 |
1年間の 所定労働日数 |
6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月 |
4日 | 169〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 | 3日 |
※所定労働日数が少ない労働者については、年次有給休暇の日数は所定労働日数に応じて比例付与されます。
※比例付与の対象となるのは、所定労働時間が週30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下の労働者です。
Q5 年5日の年次有給休暇取得義務の対象となる労働者を教えてください。
A5 年次有給休暇が10日以上付与される労働者が対象です。
対象労働者には管理監督者や有期雇用労働者も含まれます。パート・アルバイトであっても年10日以上有給休暇が付与される労働者は対象です。
勤続年数が3年6カ月以上のパート・アルバイトも所定労働日数によっては対象になります。(Q4参照)
Q6 有給休暇の取得義務化で何が変わるのですか?
A6 従来までの労働者からの申し出による取得に加え、年5日について使用者
が時季を指定して取得させることが義務付けられました。
出典:厚生労働省リーフレット(年次有給休暇の時季指定義務)
従来までは、労働者から使用者に対して「○月×日に休みます」という請求により有給休暇を取得していました。(原則)
これでは有給休暇の申請をためらってしまい、有給休暇が取得しにくいという問題がありました。(年次有給休暇の取得率:49.4%「平成29年就労条件総合調査」)
そこで、年5日の有給休暇については、使用者から労働者に対して「○月×日に休んでください」と使用者側が時季を指定して取得させることが新たに義務付けられました。
Q7 使用者側からの有給休暇の時季指定はどのように行ったらよいですか?
A7 使用者が労働者に「いつ年次有給休暇を取得したいか意見を聴取」し、
その意見を尊重して使用者が取得時期を指定することになります。
年次有給休暇をいつ取得するかは、労働者の意見を聴取しなければなりません。
できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう努める必要があります。
出典:厚生労働省リーフレット(年5日の年次有給休暇の確実な取得)
ただし、有給休暇は心身の疲労回復が目的であり、賃金の減少を伴わずに労働義務の免除が受けられる制度ですので、元々休日だった日に有給休暇を取得して賃金を得ることはできません。
Q8 年5日の年次有給休暇はいつまでに与えればいいですか?
A8 年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内です。
今回の改正では、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日間の取得時期を指定して、年次有給休暇を取得させなければなりません。
出典:厚生労働省リーフレット(年5日の年次有給休暇の確実な取得)
Q9 年5日以上の有給休暇を取得している労働者に対しても有給休暇の時
季を指定する必要がありますか?
A9 既に年5日以上の有給休暇を取得している労働者に対しては、使用者に
よる時季指定の必要はありません。
以下のいずれかの方法で取得した年次有給休暇の合計が年5日に達した時点で、使用者による時季指定の義務はなくなります。
@労働者自ら請求し取得した有給休暇(原則)
A使用者による時季指定(新設)
B計画年休(Q10参照)
また、既に年5日以上の有給休暇を取得している労働者に対して、使用者が時季を指定してさらに有給休暇を取得させることはできません。
残りの有給休暇は、原則に従い労働者から使用者への申し出による取得になります。
Q10 労働者が指定した時季に休まれると困るのですが、時季の変更は可能
ですか?
A10 事業の正常な運営を妨げると判断できる場合は時季を変更できます。
使用者は、労働者が指定した時季に休暇を与えることで、事業の正常な運営を妨げる場合においては他の日に変更することができます。(時季変更権)
「事業の正常な運営を妨げる場合」の判断基準
事業の規模、内容、有給を請求した労働者の担当する作業内容、性質、作業の繁閑、代行者の配置が可能か、労働慣行等の事情を客観的に判断すべきである(53.1.31大阪高判)とされています。
Q11 有給休暇を取得した際に払うべき賃金はいくらになりますか?
A11 就業規則等において定めた金額を支払うことになります。
@又はAを原則として、就業規則等に明確に定めておく必要があります。
@平均賃金
A所定労働時間に労働した場合に支払われる賃金
B健康保険の標準報酬月額の1/30に相当する金額
どの方法を採用するか、その都度変更できるものではありません。
Bの金額を採用する場合、労使協定の締結が必要になります。
Q12 有給休暇の管理にルールはありますか?
A12 労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければな
りません。
有給休暇の付与日(基準日)、取得日数、取得した日付が労働者ごとに分かるように労働者名簿や賃金台帳に記載する必要があります。
いつでも出力できることを条件に勤怠管理システム等により管理することも可能です。
有給休暇の残日数で管理されている事業所も多いことと思いますが、残日数の管理では年5日の取得義務を満たしているか確認がとれません。
取得日と取得日数を管理する方法に管理簿の変更が必要です。
Q13 入社時期がばらばらで管理が大変です。何か良い方法はありますか?
A13 計画的付与という制度があります。
導入する場合は就業規則に定め、かつ労使協定を結ぶ必要があります。
@ 企業全体又は支店単位で一斉に休む方法(例1)完全週休二日制でない事業所は、閑散期の土曜日に一斉に休む
(例2)8/13〜8/15が就業規則上、休日として規定されていない場合、計画的
付与により有給休暇を3日取得
A 班・グループ別の交代で休む方法
B 個人別に計画表をもとに休む方法
※労働法上、休日と休暇は区別されます。就業規則上、どのような取扱いになっているか確認する必要があります。
休日...労働義務が課されている日
休暇...労働義務がある日に労働義務を免除する日
※デメリット
・休暇は増えるが休日が減るといった運用なると、年間休日が少なくなり求人で不利
・単に有給休暇の残日数が減るだけといった運用は労働者の不満になる